指揮者高橋利幸指導の指揮法講座

指揮法講座 〜はじめに〜


「指揮が変わったら、演奏も変わった。」…そんな経験ありませんか?

演奏者へ自分の思いを伝えるために、指揮は様々なテクニックを必要とします。そのテクニックがあるかないか、
指揮の振り方ひとつで演奏が変わるのです。

"曲の感じだけで何となく"…という指揮をしていませんか?

 

斎藤秀雄 メソードによる指揮法は、筋肉のコントロールから始まり、叩き・しゃくい・先入・平均運動など 科学的に指揮をするための必要な要素を分類し、単に図形をなぞるだけの指揮法とは一線を画した世界を見わたしても類をみない画期的な方法で指揮の基本テクニックを身に付けていくことができます。

 

一度習得すれば多様な曲に応用ができ、的確で明瞭な指揮でアンサンブルを整えると同時に、表現の本質に迫ることができる唯一の系統的に組み立てられたメソードです。

 

この講座は、ちば室内管弦楽団の指揮者であり、管弦楽、吹奏楽、合唱指導と多様な経験を元に、数少ない齋藤メソードを継承した指揮法の指導者として実績を持つ「高橋 利幸」講師が責任を持って担当するレッスンです。

 

オーケストラ・吹奏楽・合唱団などの指揮(指導)をされている方、教育現場の先生方、演奏者の力を引き出す
指揮法をマスターしませんか?

実践的指揮法 指揮をする人、しなければならない人に

「指揮法」「指揮の基礎」「合奏指揮法」と、「指揮」の本や映像化されたものが、すでにいくつも出回っている。その多くが、職業指揮者を目指すための、あるいはなるための目的が第一になっていると思われる。内容が詳細にわたり、丁寧に詳細に書かれている。もう一つが、楽譜とそれに併せて指揮の図形が描かれているような形だ。これは逆に、平易すぎて応用が難しい。 実践的指揮法とは、斉藤秀雄の指揮法メソッドを基礎にしながら、プロの指揮者ではないが、実際に指揮という行為をしている人、あるいは、立場上指揮をどうしてもしなければならない人(学校の先生方、音楽科、部活の指導者、あるいは、音楽を専門としない先生方)が、身につけておけば勇気と自信をもって指揮台に立てるための指揮法である。 実践するときのいろいろな場面での指揮に必要なもの、あるいは、指揮をする前に認識しておく必要があるものを網羅していく。この指揮法は合唱、吹奏楽、弦楽、管弦楽と指揮の必要な場面のどこにでも通用するものである。 

◆指揮棒

 

指揮棒は持つべきですか、持たなくてもいいのですかとはよく聞かれる。 合唱指揮の50人編成程度までなら持たなくてよい。ただし、学校など児童生徒を前にしての式典での校歌や学年、全校合唱の時は持った方がよい。これは、表現の精緻が求められる場合と式典でのスケールが必要とされる場合との差によるものだ。特別な判断もある。定型詩の繰り返しで曲が構成されているもの。ミサ曲、レクイエムが代表的なものの一つだ。この場合は、指揮棒を持っても持たなくてもよい。アカペラや微妙に詩のニュアンスを伝えなければならない曲の時は、編成にかかわらず指揮棒は持たなくてよい。楽器を使った編成の時は、指揮棒が必要だ。楽器を通して出される音は音圧が高い。音量の幅も大きい。楽器によって音の出るタイミングがそれぞれ違う。そんな時には、指揮者の腕プラス30センチ、40センチの指揮棒が必要だ。腕の動き手首の動き、時には指先の動きをさらに増幅してくれる。指揮棒は魔法の杖だ。 困るのは次のようなケースだ。指揮法に自信がないから、棒を持たずに、手の動きだけで曖昧に振るというケース、これは意外に多くある。これは本人がよくても、指揮をされる児童生徒はたまったものではない。一番避けるべき発想だ。 合唱、式典、合奏と三つに分ければ、判断が明確につくだろう。もちろん例外もある。しかしこの原則で解決がつく。合唱プラス器楽の編成の時は、棒を持つ。10人20人の弦楽やギターなどの編成では棒を持たない。指揮の大家は、別物だ。小澤征爾さんは、ある時期から指揮棒を持たなくなった。朝比奈隆さんは最後まで指揮棒をもっていた。ロブロフォン・マタチッチは指揮棒を使わない。ストコフスキーも同様、イゴール・マルケビッチは最後まで指揮棒を使っていた。シャルル・ミュンシュ、ピエール・モントゥーはとりわけ長い指揮棒を使っていた。指揮棒を使って有効に指揮をし、指揮棒を使わないで有効に指揮をする、これが実践的指揮法だ。


◆指揮棒の選び方

 

軽い材質で、握る部分がちょうど手の内に入るくらいのコルクの握りがあるもの。人差指の第一関節と親指の腹の部分で、軽く握り、そこに重心があるものを選ぶ。市販の指揮棒の大部分はこれに当てはまらない。握りが小さ過ぎるもの、重心が前に行き過ぎたものがほとんどだ。指揮棒のどこに重心を定めるかの配慮はないといってよい。
自分の指揮棒は自分で工夫してマイ指揮棒を持つ。もちろん新しく指揮棒を作るのは、木工細工の専門家でもなければとてもできない。そこで既製品の加工をする。木製の指揮棒を購入し、紙やすりで木の部分、つまり、握りの先の部分を少しずつ細くしていく。コルクの部分の細工はしない。やがて、細くなって削れた分だけ、重心が手前に移ってくる。手の内側にも、握りの先からも重さを感じないもの、これがベストの重心だ。
重さと、細工のことを思えば、木製のものしか該当しない。カーボンやグラスファイバーのものは、重いことと、細工ができないので、選ばない。
考えてみれば、楽器選びには相当気を使う人が多いだろう。指揮棒は音を出せないが、音を出すための元だと思えば、それ相応のエネルギーを使うべきだ。楽器屋さんの持ってきた2,3本の中から選べるほど指揮棒選びは甘くはない。